◆3/29 原発賠償 京都訴訟第25回期日の御礼と報告

支援する会事務局の上野と申します。

3/29の原発賠償京都訴訟第25回期日の報告です。今回は春休み、年度末という事情もあってか、支援者の出足が悪く、時間切れで抽選には至りませんでしたが、傍聴券はすべてなくなり、傍聴席は満席となりました。

今回は原告7人が証言台に立ちました。前回と同じように主尋問5分、反対尋問20分(東電・国合わせて)、再主尋問5分という変則の時間配分でした。それぞれの原告が訴えた要点をまとめてみました。なお、資料はなく、耳で聞いたことをメモしたので、聞き間違いがあるかもしれませんが、ご容赦ください。

◇須賀川市から避難し、いまは戻っている男性は、念願のお好み焼き屋を開業していたが、事故が起こり、一番は娘の健康だと思い、店を処分して避難。だが、いい就職口が見つからず、3年後に戻った。私の人生は原発事故で狂わされ、夢をあっという間に壊された。その責任を取ってほしい、と訴えました。

◇福島市から避難した女性は、自分の工房を持ち、陶器の制作・販売、陶芸教室を開いていた。収入は少なかったが喜びを感じていた。娘の健康被害を心配して避難した。避難後は陶器の制作はしていない。工房は今も線量が高くて帰れない。放射線量が事故前に戻ったら、すぐにでも帰りたい、と証言しました。

◇いわき市から避難した女性は、何も知らずに外に出て子どもたちを被曝させた。これ以上被曝させたくないと思い避難した。今年の正月に実家に帰った時、周囲の線量を測ったが、自宅前にあるブルーシートや神社など線量が高いところがあり、帰るのは危険だと思った。かけがえのない時間を犠牲にして避難したことを理解してほしい、と訴えました。

◇福島市から避難し、いまは戻っている女性は、パティシエとしてお菓子教室を開いていた。避難先では優しい言葉をかけてくれる人もいたが、差別的なことを言う人もいた。心身の疲労と経済的にやっていけなくて、妥協して戻らざるを得なかった。フレコンバッグがあちこちにあり、昔のようではない。食材についてはとても気を使っている、と証言しました。

*次は郡山市から避難の女性でしたが、私は井関弁護士から呼ばれて廊下に出たために、主尋問と東電代理人の反対尋問を聞くことができず、要点をまとめることができません。悪しからず。

◇福島市から避難し、いまは新潟県の長女宅に身を寄せる女性は、助産士の資格を取り、長年の夢だった助産所を開設。もともとプルサーマルに反対し、もし事故があれば避難しようと思っていたので、三女のいる京都へ。その後、左腕を壊死性感染症に侵され、入院中付き添ってくれた長女の家に移住。助産所のお客は80人ぐらいいたが、そのうちの15人くらいが避難した。事故が落ち着けば帰りたい。チェルノブイリのように原発を囲ってもらいたい、と訴えました。

◇いわき市から避難した女性は、観光農園を営み、ブルーベリーなどを栽培していた。ベリー類は収穫するまでに時間がかかる上に、放射能を吸着しやすいため、原発の爆発に危機感を持ち、農園を廃業して避難した。京都で起業を支援するプロジェクトに応募し、ブルーベリー栽培を始めたが、収穫はまだ。葛藤しながら生活している、と証言しました。

今回の反対尋問では、細かい質問が目立ちました。自分で放射線量を測定した原告に対しては、「どんな器具を使ったか?」、「いつ購入したか?」、「どこを測ったか?」、「地上何センチで測ったか?」、「計測した数値はメモしたか、誰がメモしたか?」、「この数値は記憶で書いたのか?」など。また、「家財道具の処分の意味は?」(売ったのか、捨てたのか?)、「領収書は残していないのか?」など損害請求の内訳についても細かく聞いてきました。

証言された原告のみなさんは、あとで振り返れば、あそこはこう言えば良かったとか、陳述書をもう一度ちゃんと読んでおくべきだったなど、いろいろ反省点はあると思いますが、それぞれ頑張って証言されました。

トピックを一つ。今回は証言者が7名といつもより少なかったこともあってか、反対尋問が決められた10分(東電)、10分(国)を超えることがしばしば。いまは新潟県に在住の女性に対する東電代理人の反対尋問が特に長く、どう考えても20分ぐらい尋問しているなといらいらしていた時でした。川中弁護団長がすくっと立ち上がって、裁判長に抗議してくれました。

そもそも3時半には終わるだろうと予想して、報告集会を3時半から5時までと設定し、群馬訴訟判決の解説を予定していましたが、裁判長の緩慢な訴訟指揮で時間が大幅にずれ込み、終わったのは4時半。会議室が5時半まで取ってあったので、とりあえず報告集会へと声をかけ、30数名の支援者と証言台に立った2名を含む11名の原告の参加がありました。

群馬訴訟判決について解説するはずの田辺弁護士は進行協議で到着が遅れ、会場を出なければいけない5時半にやっと到着。当初予定を大幅に短縮して15分程度で話してもらいました。敷地高を超える津波は予見可能だった、また時間も費用もそんなにかからない措置をとっていれば結果は回避できたとして、東電と規制権限を行使しなかった国の責任を認めた点は評価できることが確認できました。ただ、それに比べて損害については半分以上の原告が賠償を認められず、認められた賠償額も極めて低額である点については疑問がのこりましたが、時間切れで質問の時間がとれませんでした。

群馬訴訟判決については、支援する会の総会&講演会(日程未定)でも取り上げようと計画しています。次の期日(原告本人尋問)は4月21日(金)です。引き続き、ご支援をよろしくお願いします。

◆3/28の大阪高裁決定-国と電力会社に屈した判断

【2017年3月31日,京都キンカンで配付。】

大阪高裁抗告審で
民意を踏みにじり、裁判制度の根幹を揺るがす決定
脱原発・反原発が民意
国と電力会社の圧力に屈した判断を乗り越えて、
原発全廃に向けて前進しよう!

◆大阪高裁第11民事部(山下郁夫裁判長、杉江佳治裁判官、吉川慎一裁判官)は、3 月 28 日、高浜原発 3、4 号機の運転差止めを命じた大津地裁2016年3月9日仮処分決定、および、これに対する関電の異議を退けた同裁判所同年7月12日決定を取り消しました。

関電、政府、原子力規制委の主張のみを追認し、
圧倒的多数の脱原発・反原発の民意を踏みにじり、
人の生命と尊厳をないがしろにする大阪高裁

大津地裁とは正反対の決定

以下に、大津地裁の決定と大阪高裁の決定を比較します。【大津地裁【大阪高裁】は、それぞれ、大津地裁、大阪高裁の見解、【コメント】は、チラシ作成者(木原)のコメントを示します。

・福島事故への反省と新規制基準

【大津地裁】
◆「福島原発事故の原因を徹底的に究明できたとは言えないので、新規制基準はただちに安全性の根拠とはならない」とし、福島事故後に作られた新規制基準でも「公共の安寧の基礎にはならない」と断じた。すなわち、福島の事故を踏まえた規制基準や安全性を求めている。また、災害が起こるたびに「想定を超える」災害と繰り返されてきた過ちに真摯(しんし)に向き合うならば、「常に危険性を見落としている」という立場に立つべきだとした。
【大阪高裁】
◆新規制基準は最新の科学的・技術的知見に基づいて策定されており、福島事故の原因究明や教訓を踏まえていない不合理なものとは言えない。また、原発に「絶対的安全性」を期待するのは相当でないとして、これまでの原発訴訟(例えば、昨年4月の福岡高裁宮崎支部の決定)と同様に、新規制基準に適合しているかどうかを争点とした。
【コメント】
◆福島で溶け落ちた原子炉は、高放射線で、内部の様子は事故から6年経った今でも分かっていない。したがって、福島事故が大惨事に至った真の原因が究明されたとは言えない。現在「想定」されている事故原因(津波による電源喪失)が真の直接事故原因とは異なるという指摘は多い。また、次の事故が福島の事故と同じ原因で起こるとは限らない。事故原因が異なれば、重大事故を避けるための基準も異なる。一方、汚染水はたれ流され続け、汚染土壌をはぎ取ることはできても除染する有効な方法はなく、使用済み核燃料の処理処分法もなく、地震の発生時期や規模を予測することも不可能な状況が科学技術の現状であり、最新の科学的・技術的知見でも原発の安全運転を保証するものではない。すなわち、新規制基準は万全とは程遠いと言える。したがって、田中規制委員長までもが、ことあるごとに「“新規制基準”は安全を保証するものではない」と言わざるを得ないのである。それでも、大阪高裁は“新規制基準”を「安全基準」とみなし、この「安全基準」に適合しているとして、高浜原発3.4号機の運転差止め仮処分を取り消したのである。新規制基準に適合とされた原発は事故を起こさないとする「新安全神話」を作ろうとしている。

◆大阪高裁は、原発に「絶対的安全性」を期待しなくても良いとした。リスクはあっても、経済のためには原発を運転しても良いとする、人の命と尊厳をないがしろにする考え方である。原発で重大事故が起これば、時間的・空間的に、他の事故とは比較にならない惨事となるので、原発は万一にも重大事故を起こしてはならない。したがって、絶対安全性(あるいはそれに近い安全性)が求められるが、現代科学技術の水準、人為ミスの可能性、人の事故対応能力の限界などを考え合わせると、そのような安全性を確保することは不可能であるから、原発を運転してはならないのである。

◆福島事故以降の経験は、原発は無くても、人々の生活に何の支障もないことを実証し、原発は経済的にも成り立たないことを明らかにしている。したがって、ドイツ、イタリアをはじめリトアニア、ベトナム、台湾が原発を断念し、アメリカまで脱原発に向かっている。国内でも、ほとんどの世論調査で脱原発を求める声が原発推進の声の2倍を超え、東芝をはじめ、多くの企業が原発製造から撤退しつつある(福島事故以降、世界中の原発に対する規制が強化され、原発建設費が高騰したたこと、シェールガスなどの代替燃料が安価になったことが原因。杜撰経営も一因)。必要でない原発を安全性をないがしろにして運転する理由は見当たらない(国民からすれば)。

・基準地震動について

【大津地裁】
◆関電は基準地震動(下記コメント参照)について、高浜原発周辺には、平均像を上回る地震の発生する地域性はないので、平均像で良いと主張したが、住民側は、実際の観測記録は大きくばらついているので、少なくとも最大値をとるべきと主張した。大津地裁は、平均性を裏付けるに足りる資料は見当たらず、関電の主張は採用できないとした。
【大阪高裁】
◆関電の主張する基準地震動が、規制委員会によって、新規制基準適合とされているから、また、基準地震動の策定には合理性が検証されている関係式などが用いられているので、過小であるとは言えないとした。
【コメント】
◆基準地震動とは、原発の設計において基準とする地震動(地震で発生する揺れ)で、原発周辺の活断層などによって大地震が起きたとして、原発直下の最大の揺れを、地盤の状況を加味して見積もったものである。地震は地下深くで起こる現象であるから、地震の原因となる断層面を観察することは困難であり、地震現象の形態は多様であるから、地震の規模を理論的に推定することは難しい。そこで、基準地震動は、過去の(極めて限られた)観測地震データを基に作られた経験式によって計算される。この計算式は、地震動の平均像(複数の要因を組み合わせて求めているので、平均値と呼ばず、平均像とする)を表現したものであるから、起こりうる地震動の最大値を示しているものではない、例えば、500ガルの地震が4回、1500ガルの地震が1回起これば、平均値は700ガルである。平均からずれた地震はいくらでもある。なお、阪神・淡路、東日本の大震災は地下16 km、24 kmの断層に起因して発生しているが、このような深層断層は地震が起こって初めてわかるもので「未知の深層活断層」と呼ばれ、その様子は全く分かっていないので、深層活断層を考慮した計算は不可能である。

・電力会社の立証責任について

【大津地裁】
◆「新規制基準に合格したから安全」という関西電力(関電)に対して、「福島事故後に、どう安全を強化したのか」を立証するように厳しく求めた。しかし、関電は、外部電源の詳細、基準地震動設定の根拠などを納得できるほど十分に証明せず、使用済み燃料ピットが安全であることを証明する十分な資料の提出もしなかった。過酷事故時の安全対策が十分である証明もいい加減であった。したがって、関電による立証は不十分であるとした。
【大阪高裁】
◆関電は、新規制基準に適合とされたのであるから、原発の安全性を立証しているとした。ここで、もし住民側が、新規制基準(大阪高裁は安全性の基準と呼んでいる)自体が、現在の科学的・技術的知見に照らして合理性を欠く、または、規制委の審査および判断が合理性を欠くと考えるのなら、住民側でそのことを立証する必要があるとしている。
【コメント】
◆大阪高裁は、住民が“新規制基準”に不備があるとするのであれば、それを住民側が立証すべきだとして、「立証能力が無ければ泣き寝入りしろ」と言わんばかりの、裁判制度を根底から揺るがしかねない要求をしている。

◆ところで、原発裁判のような高度の専門的知識を要する裁判では、一般人が、議論のすべてに関する資料や根拠を調べて、裁判所に提出することは困難である。したがって、1992年の伊方原発裁判で最高裁は、被告である政府や電力会社の側が、原発稼働を進めるにあたって、依拠した具体的審査基準、調査審議および判断の過程等の全てを示し、政府や電力会社の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づいて主張、立証する必要があるとしている。また、政府や電力会社が主張、立証を尽くさない場合には、彼らの判断に不合理な点があることが事実上認められたとすべきであると述べている。

◆しかし、先にも述べたように、新規制基準は、福島事故の原因も確定せず、事故炉の内部も分からず、汚染水や汚染土壌対策も十分とするには程遠く、使用済み核燃料の処理処分法もなく、地震の発生時期や規模を予測することも不可能な状況下で作成されたものであり、どの角度から見ても原発の安全運転にとって不十分であり、規制委員長も言うように、科学技術的に安全を保証したものではない。それゆえに、安全安心に不安を持つ住民が、原発の運転差止めを求めているのである。それ故、新規制基準に適合した原発を安全というのなら、関電や政府は、伊方原発訴訟最高裁判決の要求に従って、新規制基準が安全を保証するということを立証する責任を果たさなければならない。

・原子力災害時の避難について

【大津地裁】
◆福島事故の影響が広域におよんでいることを考えれば、自治体任せでなく、国主導で早急に避難計画を策定し、訓練を実施することが必要であるとし、また、そのような基準を策定すべき信義則上の義務が国家には発生しているとした。さらに、関電は、避難計画を含んだ安全対策を講じるべきであるとした。
【大阪高裁】
◆新規制基準では、多重防護の考え方に基づいて第1層から4層までの安全確保対策が講じられているから、炉心の著しい損傷を防止する確実性は高度なものになっているとし、第5層(避難計画など)は、重大事故は起こりえない原発で、放射性物質が周辺環境へ異常放出される事態をあえて想定して、講じられる対策であるとしている。その上で、第5層の対策は、電力会社だけでなく、国、地方公共団体が主体となって適切に実施されるべきものであるから、新規制基準が避難計画などの原子力災害対策を規制対象にしていないのは妥当であるとした。
【コメント】
◆大阪高裁は、新規制基準の下では、原発は事故を起こすはずがないという視点(すなわち、「新安全神話」)に立ち、不可能に近い被曝なしでの避難、長期の避難生活の悲惨さについて議論することを避けた。避難の問題を議論したら、原発の運転をできないことは、福島やチェルノブイリの大惨事によって実証されているからである。福島で6年、チェルノブイリで31年経った今でも避難者の大半が故郷を失い、家族の絆を引き裂かれ、心労と悲観、病苦から多数の方が自ら命を絶たれ、癌に侵され、発癌の不安にさいなまれていることを、大阪高裁はどう考えているのであろうか。

◆大阪高裁は決定の中で、避難計画などの原子力災害対策については未だ改善の余地はあるが、取り組み姿勢や避難計画等の具体的内容は適切であり、不合理な点があるとは認められないとした。しかし、昨年8月27日に高浜原発から30 km圏の住民179,400人を対象にして行われた避難訓練は、最大規模と言われながら、参加者数は屋内退避を含めて7,100人余りで、車両などでの避難に参加したのはわずか約1,250人であった。それも県外への避難は約240人に留まった。この規模は、重大事故時の避難の規模とはかけ離れた小ささである。車道などが使用不能になったことを想定して、陸上自衛隊の大型ヘリによる輸送訓練も予定されていたが、強風のため中止された。また、悪天候のため、船による訓練は全て中止された。老人ホームなどへの事故に関する電話連絡は行われたが、実際行動の必要はないとされた。

◆なお、高浜原発から50 km圏には、京都市、福知山市、高島市の多くの部分が含まれ、100 km圏には、京都府(人口約250万人)、滋賀県(人口約140万人)のほぼ全域、大阪駅、神戸駅を含む大阪府、兵庫県のかなりの部分が含まれる。このことと福島原発から約50 km離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、高浜原発で重大事故が起こったとき、数100万人が避難対象となる可能性が大であり、避難は不可能であることは自明であるが、避難訓練では、そのことが全く考えられていない。なお、この圏内には琵琶湖があり、1,450万人の飲用水の汚染も深刻な問題である。さらに、避難訓練には、原発事故での避難は極めて長期に及ぶ(あるいは永遠に帰還できない)という視点がない。福島およびチェルノブイリの事故では、今でも避難された10数万人の大半が故郷を失ったままである。

◆それでも、大阪高裁は、避難計画等の取り組み姿勢や具体的内容は適切であるとしている。

大阪高裁で逆転されたからと言って、
大津地裁の大英断を無駄にしてはなりません。
重大事故が起こってからでは遅すぎます。
原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!
さらに大きな反原発のうねりを創出しましょう!
目先の経済的利益や便利さを、人が人間らしく生きる権利や
事故の不安なく生きる権利と引き換えにしてはなりません。

[追記]3月30日、広島地裁は、伊方原発運転差止め仮処分の申し立てを退けた。昨年4月6日の福岡高裁宮崎支部、去る28日の大阪高裁の場合と同様の理由によって、電力会社、政府の主張をそのまま追認したもので、民意を踏み躙るものです。

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

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◆3/28の大阪高裁決定について(井戸謙一弁護士)

以下,井戸謙一弁護士のFacebookより転載。
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昨日は、大阪高裁に沢山の方々にお集まりいただきありがとうございました。残念な結果ですが、次に向かって進んでいくしかありません。今日は、膨大な大阪高裁決定を読み込みました。その特徴としては、

①3.11前に戻った立証責任論。関西電力が立証すべきことは、高浜原発が新規制基準に適合していることだけで、新規制基準の不合理性の立証は住民に負わせています。福岡高裁宮崎支部決定(川内原発)も、福井地裁異議審決定(高浜原発)も、新規制基準の合理性の立証を電力会社側に負わせていました。大阪高裁決定と同様の考え方は、3.11前の静岡地裁判決(浜岡)、名古屋高裁金沢支部判決(志賀2号機)まで遡る必要があります。これは、伊方最高裁判決の趣旨も捻じ曲げるものです。この立証責任論は、例えば、「新規制基準が策定し、抗告人(関西電力)が実施するテロリズム対策が不合理なものであるとはいえない。」という文章に現れています(もし、立証責任を関西電力に負わせるのなら、「テロ対策が合理的である」と言えなければ、関西電力を負かさなければなりません。)、

②福島原発事故被害についての無関心(事故の原因論は述べていますが、被害については、1行も述べていません)。

③新規制基準についての絶大な信頼(適合していれば安全)、

④住民側の主張の矮小化(切り刻んで、一つ一つ片づけていく、一部は無視)等が指摘できます。

残念な結果ですが、次に向かって進んでいくしかありません。原発問題は、私たちの世代でケリをつけなければならない問題ですから。明日の、広島地裁決定に期待しましょう。

◆前橋地裁判決◆まもなく大阪高裁決定

【2017年3月24日,京都キンカンで配付。】

福島原発事故を発生させた責任は、
国と東電にある。

前橋地裁判決

福島原発事故で福島県から群馬県に避難し、生活の基盤を失い、精神的苦痛を受けた住民ら137人が国と東電に計約15億円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、前橋地裁は17日、巨大津波を予見し得た東電と安全規制を怠った国の賠償責任を認め、62人に3855万円の支払いを命じた。

東電は、安全性より経済的合理性を優先するなど、
非難に値する。

◆判決で、前橋地裁(原道子裁判長)は、「政府は2002年に福島沖を含む日本海溝沿いでマグニチュード8級の津波を伴う地震が30年以内に発生する確率は20%程度」との長期評価を発表しているので、国と東電は巨大津波の発生を予測できたはず」と述べ、また、「東電は2008年には、長期評価に基づき、津波の高さを試算し、実際に予測していた」と指摘した。その上で、東電は、「この予測にもかかわらず、容易で、実行していれば事故は発生しなかった措置(配電盤を高所に設置するなど)をとらなかった」、「原発の津波対策は常に安全側に立って行わなければならないにもかかわらず、東電は、安全性より経済的合理性を優先させたことなど、とくに非難に値する事実がある」と述べている。

この裁判および他の同様な訴訟において、核心的な争点は「津波の予見可能性」である。

前橋地裁の判決は、「可能か否か」を飛び越えて、「実際に予見していた」と断言した点で画期的である。

国は、東電に対する規制権限を行使せず違法。

◆判決で、前橋地裁は国の責任について、「国には、東電に津波対策を講じるよう命令する権限があり、事故を防ぐことは可能であった。2007年8月に、東電が自発的な津波対策をとることを期待することは難しいことも分かっていたと言え、国の対応は著しく合理性を欠く」として、「国と東電には何れも責任があった」と認めた。国の責任を司法が初めて認めたのである。現在約30の集団訴訟が行われているが、その最初の判決で、国の責任を認めたことは、他の裁判へ与える影響は大きいと考えられる。

この裁判および他の同様な訴訟において、もう一つの核心的な争点は「電力会社と一体で原発事業を推進してきた国の責任」である。国策である原子力事業の関連法制は複雑で、原発事故の責任の所在は分かり難い。原子力賠償法でも、原子力事故の賠償は電力会社が行い、国が必要費用を援助するという規定はあるが、今回の訴訟では、国は規制権限(津波対策を命ずる権限)の存在すら否定していた。

前橋地裁の判決は、「国は、2007年8月には、東電が自発的あるいは口頭による指示に従って適切な津波対策を行うとは期待できないことを認識していた」と指摘し、「この時点で対策を命じていれば事故は防げた」と断言した。その上で、「国と東電には同等な責任がある」とした。一度事故が起これば、甚大な被害が出る点を重視した画期的な判決である。

福島原発事故は「人災」であることを強調

◆判決では、国と東電が対策を怠ったために事故が起こったとする「人災」の側面を強調し、事故は防げなかったとする国や東電の主張をことごとく退けた。[国や東電には、原発事故は、一旦対応を間違え、炉心損傷が進行し始めたら、現代科学技術で制御することが出来ず、取り返しがつかない大惨事に発展するという認識が薄かったし、現在も薄い。これが、原子力ムラの傲慢でたるみ切った体質である(筆者の意見)]。

◆一方、「事故により、平穏な生活が奪われた」という原告の主張を認め、国が定めた指針とは異なる独自の枠組み(右の表を参照)を採用して。賠償を命令した。これに関して、原告は、「生活基盤が一瞬で奪われ、長期間不便を強いられ被害は例がない。慰謝料は不十分。放射性物質への不安のために、自主避難するのは合理的」と主張し、被告(国と東電)は、「過去の裁判例も参考にした国の指針は妥当。避難区域外に滞在することに支障はなく、自主避難者への賠償は事故後の一時期を除いては理由がなく不要」と主張していた。

賠償が認められたのは一部だけ。
それも低額。

◆前橋地裁の判決は。上記のように、今までの司法判断を乗り越えて、国と東電の責任を問い、賠償についても、一定程度、避難者の側に立つもので、原発事故で避難者がこうむった苦しみやストレスに目を向けている。

しかし、賠償が認められたのは、一部だけであり、故郷と生活基盤を奪われ、平穏な日々が戻らない人々にとって、納得できるものではない。

2017年3月18日京都新聞朝刊
▲2017年3月18日京都新聞朝刊

高浜原発3、4号機運転差止め仮処分決定
大阪高裁での保全抗告審:28日に判断
当日、大阪高裁に結集しよう!

(時間は、前日27日に連絡されるとのこと)

大津地裁仮処分決定→大阪高裁抗告審の経緯

◆大津地裁(山本善彦裁判長)は、昨年 3 月 9 日、高浜原発 3、4 号機の運転を差止める決定をしました。若狭の原発が重大事故を起こせば、深刻な被害を受ける可能性が高い滋賀県に住む人々の申し立てを全面的に認めたものです。なお、滋賀県は全県、高浜原発から100 km 圏内にあります。

◆稼働中の原発の停止を司法が求めたのは世界初です。また、立地県外の裁判所での原発運転差し止め判断は日本では例のないことです。福島原発事故の被害が広範囲に及び、今も解決していない現実を踏まえた、勇気ある画期的な決定でした。

◆仮処分決定は、速やかに行動しなければ取り返しがつかない事態が生じかねない案件のみに出されるもので、決定されれば即座に効力を発するものです。したがって、関電は、稼働中の 3 号機を 決定翌日の10 日夕刻に停止しました。関電は、大津地裁に決定の執行停止および異議を申し立てましたが、各々、6月17日、7月12日に退けられ、現在も高浜3,4号機は停止したままです。関電はそれでも懲りずに、大阪高裁に抗告しました。抗告審の審尋は10月13日に1回だけ行われ、それぞれ相手の主張に対する反論、再反論をする機会が与えられ、12月26日に終結し、今日の決定に至りました。

大津地裁仮処分決定の骨子

以下に、大津地裁仮処分決定の骨子と背景を簡単に解説します。

1.新規制基準に適合したからと言って、原発が安全だとは言えない。

◆政府は、福島原発事故後にできた新規制基準は「世界一厳しい」と言っています。一方、原発がこの新基準に適合するか否かを審査した原子力規制委員会(規制委)の田中委員長は、「新基準に適合しただけで、原発の安全を保証したものではない」とコメントしています。これらの発言からは、政府と国の規制委が異なる見解を持っているようにも受け取れますが、冷静に考えれば、これは、「世界一厳しい」基準で審査しても、原発は安全でないと国が言っていることになります。それでも、関電、政府、規制委は一丸となって高浜原発再稼働に突っ走ろうとしました。

◆これに対して、大津地裁は「福島原発事故の原因を徹底的に究明できたとは言えないので、新規制基準はただちに安全性の根拠とはならない」とし、福島事故後に作られた新規制基準でも「公共の安寧の基礎にはならない」と断じました。これまでの原発訴訟では、新規制基準に適合しているかどうかが争点でしたが、大津地裁の決定は、新規制基準自体の合理性にも疑問を投げかけ、新たな判断枠組みを示したものともいえます。この判断は、全国で行われている多くの裁判にも影響を与えるものと考えられます。例えば、去る3月17日の前橋地裁決定にも何らかの後押しをしているのでしょう。

2.原発の安全性の立証責任は関電側にある:
十分説明できない場合は再稼働に不合理な点があると考えざるを得ない。

「新規制基準に合格したから安全」という関電に対して、大津地裁は「福島事故後に、どう安全を強化したのか」を立証するように厳しく求めました。しかし、関電は外部電源の詳細、基準地震動の設定の根拠などを、納得できるほど十分に証明しませんでした。使用済み燃料ピットが安全であることを証明する十分な資料の提出もしませんでした。過酷事故時の安全対策が十分である証明もいい加減でした。すなわち、関電は、彼らの主張を立証する責任を果たしていません。

◆なお、伊方原発訴訟(地元住民が原子炉設置許可をした内閣総理大臣に対して、設置許可の取り消しを求めて提訴したもの)での最高裁判決(1992年10月)は、原発の賛否に係わらず、原発の安全性確保に関して留意すべき、行政と司法のあり方を次のように示しています。(大津地裁の裁判は、内閣総理大臣が被告でなく、関電が被告ですから、行政庁を関電と読み替えてみて下さい。)

◆原子炉施設の安全性に関する裁判では、専門技術的な調査審議を基にしてなされた行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきである。このとき、原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、行政庁の側において、まず、その依拠した具体的審査基準ならびに調査審議および判断の過程等、行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、行政庁が主張、立証を尽くさない場合には、行政庁がした判断に不合理な点があることが事実上認められたとすべきである。

3.避難計画が新規制基準での審査に含まれていないことが問題。

◆政府は、1昨年12月、高浜原発から半径 30 km 圏の福井、京都、滋賀の広域避難計画を了承しましたが、大津地裁の決定時までには、関係自治体による一斉訓練は一度も行われていません。この点について、大津地裁は、自治体任せでなく、国主導で早急に避難計画を策定し、訓練を実施することを求めています。福島の過酷事故を経験した国には、避難計画をも視野に入れた幅広い規制基準を作成することが望まれ、作成が義務であろうとし、また、関電は、万一の重大事故発生時の責任を誰が負うのかを明確にするとともに、新規制基準を満たせば十分とするだけでなく、避難計画を含んだ安全対策を講じるべきであるとしています。

◆なお、政府や自治体による避難計画たるや、数週間ピクニックに出かけるようなものです。一旦、若狭で福島級の事故が起これば、若狭や京都北部、滋賀北部の地形や交通事情からして、避難は著しく困難であることは無視しています。また、例え避難しえたとしても、故郷には二度と帰れないという危機感はありません。福島原発事故から6 年、チェルノブイリ原発事故から 31 年経った今でも、両事故で避難した10 数万人の多くが故郷を奪われたままで、長期の避難生活が健康をむしばみ、家族の絆を奪い、大きな精神的負担となっていること、多くの方が避難生活の苦痛で病死され、自ら命を絶たれたこと、癌の苦しみ、発癌の不安にさいなまれていることは忘れたかのような計画です。

◆福島では事故炉から約 50 km 離れた飯舘村も全村避難を強いられました。このことは、高浜原発で重大事故が起これば、若狭や近畿北部だけでなく、60 km 程度しか離れていない京都市全域を始め、関西の大都市も永遠に住めない放射性物質汚染地域になりかねないことを示しています。避難計画では、その地域の住民数百万人の避難は不可能であること、琵琶湖が汚染されれば、関西の住民 1,450 万人や避難者の飲料水がなくなることも考えていません。

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

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◆世界は脱原発に向かっている

【2017年3月17日,京都キンカンで配付。】

原発が、人類の手に負える装置でないこと、
経済的にも成り立たないことを
福島原発の大惨事が教えました。
したがって、世界的にも脱原発・反原発の動きが加速しています。

以下に、福島原発事故後の、国際的な脱原発の動きの概要を整理してみました。ご参考になれば幸いです。

ドイツ

◆ドイツの原発依存度(電力消費量のうち原発で発電した電力の割合)は、2009年(原発17基を保有)には23%であった。しかし、2011年に発生した、福島第一原発の炉心溶融事故をきっかけに、エネルギー政策を根本的に変えた。世界中で、ドイツほど福島事故の教訓を真剣に自国にあてはめ、政策を大幅に転換させた国は他にない。もともと原子力擁護派だったメルケル首相(元物理学者)が、福島事故の映像を見て原子力批判派に「転向」し、「原子力についての考え方が楽観的に過ぎた」と反省の告白を行い、福島事故からわずか4か月後には、原発を2022年末までに全廃することを法制化したのである。老朽原発8基を即時停止し(このため、2012年の原発依存度は16%に減少)、残り9基を2022年までに停止するというもの。代替エネルギーの主役は再生可能エネルギーで、2014年の9月ですでに電力消費量の28%をカバーしているが、2035年までにこの比率を55~60%とすることを目指している。現在のドイツでは、原子力発電の復活を要求する政党や報道機関は1つもないと言われる。また、ドイツ鉱業・化学・エネルギー産業労働組合(IG BCE)のエネルギー政策提言者・バーテルス氏は「議会制民主主義に基づくこの国で、過半数を超える市民が原発全廃を支持しているのだから、そうした世論に逆行する政党は敗北するだけだ」と指摘している(日本の連合とは大違い)。

◆なお、ドイツでは、2011年3月26日にベルリンやミュンヘンで25万人が参加した反原発デモが行われている。また、リベラルな週刊新聞「ディ・ツァイト」は、2014年10月5日の電子版で、「多くの市民が再稼動について抗議しているのに、日本では原発が再び動き始める。日本は、原爆による被害を受けた世界で唯一の国だ。さらに、福島で深刻な炉心溶融事故を経験した。よりによってそうした国が、市民の反対にもかかわらず原発に固執するのはなぜなのか?」という問いを発している。これは、多くのドイツ人が抱いている疑問である。

イタリア

◆イタリア国内に稼働している原発はない。イタリアは国内のエネルギー資源が乏しいので、1950年代から原発に取り組み、ラティナ、ガリリアーノ、トリノ・ベルチェレッセの3基(16~27万kW)の発電炉が発注され、1965年までに営業運転を開始した。2度の石油危機を契機に1985年までに原発を10地点で合計2000万kW建設するなど、原子力開発に重点を置いた政策が打ち出された。1981年には、4基目のカオルソ(87万kW)が営業運転を開始した。しかし、原子力反対運動やチェルノブイリ事故の影響を受け、1987年11月に原発の建設・運転に関する法律の廃止を求めた国民投票が行われ、70%以上の反対により同法の廃止が決定した。その結果、1990年までに核燃料サイクル関連施設を含む全ての原子力施設が閉鎖された。

◆一方、閉鎖時に計画していた火力発電所の建設は進まず、フランスとスイスの安価な電力の輸入が増大した。また、総発電電力量の75%を石油と天然ガス火力に依存しているため、イタリアの電気料金はEU内でも高い水準で推移している。2003年には電力の供給不足で輪番停電が発生し、2003年9月28日、国外との高圧送電線が全て遮断される大停電となり、電力供給体制の脆弱性が露呈された。これに対して、原発開発の再開を掲げて首相に返り咲いたベルルスコーニ政権は、原子力開発を含めた早急な電源開発促進政策を進めたが、2011年3月の福島第原発事故を機に、原子力反対運動が顕著となり、2011年6月に行われた国民投票の結果、投票率54.79%のうち、94.15%の得票率で、再度国内原子力開発を断念することになった。

◆他方で、2003年に大規模停電に見舞われたイタリアは、2004年7月、「エネルギー政策再編成法(マルツァーノ法)」を成立させ、輸入電力供給の安定確保を目指している。イタリア電力公社(ENEL)はスロバキア、ルーマニア、フランスなど、諸外国の原子力発電所建設計画に積極的に参加している。

スイス

◆スイス国内には5基の原発があり、原発依存度は35~40%と言われる。福島第一原発の事故を受け、スイス政府は2050年までに脱原発を進め、再生可能エネルギーによる発電へシフトすると表明し、また、2034年までに稼働中の原発の運転を停止することを閣議決定していた。しかし、既存原発の運転年数の制限は具体的には決められておらず、それぞれの原発がいつまで稼働するかも不透明な状態で、運転開始からすでに47年(2016年時点)経過している原発もある、

◆そのため、野党「緑の党」などは、既存原発の運転期間を最長45年に制限し、1972年までに運転を開始した3基を2017年に停止させるとともに、他の2基も運転開始から45年で停止させること、それによって、2029年までに全原発を停止することを提案した。この提案に対し、経済界やスイス政府は、電力不足や化石燃料への依存が高まることを理由に、「時期尚早」と反対していた。脱原発を加速することで、原発プラント企業にペナルティを支払う必要があるとの指摘もあった。

◆直接民主制をとるスイスでは、国の重要案件は国民投票で決めることになっている。そこで、国内にある全原発の運転停止時期を早め、2029年までに全原発を停止することを争点とした国民投票が、2016年11月27日に行われた。投票の結果は、賛成が45.8%、反対が54.2%で、提案は反対多数で否決された。

◆なお、この国民投票の結果の解析を政府から依頼された調査機関・VOTOは、投票した人の中から1578人を選んで調査を行ったが、「反対票を投じた人の82%は、2029年に脱原発というのはあまりに早急で、非現実的だと考えたから反対した」との分析結果を出した。すなわち、投票結果は、「2029年に脱原発する」という「期限」に反対したのであって、脱原発そのものに反対したのではなかったという。また、反対票を投じた人の63%が「原発のないスイス」に賛成していることが分かり、これと今回の投票で原発早期全廃に賛成した人の数を加えると、「76%の人が脱原発に賛成」という調査結果になったと発表した。

リトアニア

◆かつてリトアニアの総発電電力量の約8割を占めたイグナリナ原発はチェルノブイリ原発と同型の軽水冷却黒鉛減速炉(ソ連製の古い原発)であったため、2009年までに廃炉とし、その敷地に隣接して新たなヴィサギナス原発建設(日立製作所が受注:改良型沸騰水型軽水炉)が計画されていた。2012年6月に議会が承認、正式契約は周辺国の合意を得てからではあるが、政府による契約がほぼ固まっていた。事業規模は約4千億円、合計出力は最大340万キロワット、建設は2基が予定されていた。ところが、福島原発事故を受けて原発建設への反対が強まる中、野党が原発計画の是非を問う国民投票議案を提出、国民投票が2012年10月に実施された。結果は建設反対が6割を超えたが、この国民投票は法的拘束力を持たず、政府は計画を中止しなかった。

◆しかし、同時に行われた議会選挙で社会民主党が勝利し、次期首相候補は建設計画の見直しを明言し(2016年11月発表のリトアニア国家エネルギー戦略)、正式に計画が凍結されることとなった。「市場環境が変化して費用対効果が高くなるか、エネルギー安全保障上、必要な状況となるまで、計画を凍結する」とされた。市場競争力は望めず、事実上の計画撤回と見てよい。

ベトナム

◆昨年11月22日、ベトナム国会が原発立地計画を中止する政府提案を可決した。ベトナム政府は電力需要に応える切り札として、2009年に4基の原発を建設する計画を承認し、2014年に着工する予定であった。しかし、当初案は資金難や人材不足で延期が繰り返されていた。また、2011年の福島原発事故の教訓を生かし、津波対策として予定地をやや内陸へ移動する計画変更も行っていた。予定地は、風光明媚で漁業や果樹生産の盛んな南部ニントゥアン省ニンハイ県タイアン村であった。直前の計画では、第1原発2基は2028年に、第2原発2基は2029年に稼働、第1原発はロシア、第2原発は日本が受注し、各100万キロワットで、計400万キワットの設備となる予定で、実現すれば同国初の原発となるはずであった。

◆中止の理由は、福島原発事故を受けて建設コストが2倍に高騰したことに加えて、同国の財政悪化が重なったため。また、住民の反対の強まりや、コストをさらに大きく引き上げる要因にもなる原発の使用済燃料の処理・処分の未解決問題も指摘された。再生可能エネルギーやLNGが競争力をもったことも一因である。今後は再生可能エネルギーやガス、火力などを導入するという。レ・ホン・ティン科学技術環境委員会副主任は「勇気ある撤退」と評価している。

台 湾

◆台湾では、第一~第三原発が稼働し、全電力の約14%をまかなっている。第一、第二原発は人口密集地の台湾北部、台北中心部から20 kmほどの距離にある。第一原発1号機が2018年12月に40年の稼働期限を迎えるのをはじめ、稼働中の全原発が2025年5月までに期限を迎える。

◆第一、第二原発の近くに第四原発の建設も進んでいたが、福島原発事故で安全性への不安が高まり、反対運動が激化。第四原発の稼働を目指していた馬英九(マーインチウ)・前政権は2014年に凍結決定に追い込まれた。なお、第一、二、三原発は米国製、第四原発は日本製。

◆馬政権は第四原発を直接廃炉にはせず、将来的に稼働させる選択肢を残していた。これに対し、昨年5月に就任した蔡英文(ツァイインウェン)総統は総統選で原発ゼロを公約し、本年1月11日、台湾の国会に当たる立法院で、2025年までの脱原発を定めた電気事業法改正案を可決、成立させ、稼働延長の道を閉ざした。これで、第四原発の稼働の可能性もほぼなくなった。

◆今後、太陽光や風力などの再生エネルギーへの切り替えが進むかどうかが実現のかぎという。再生エネルギー分野での電力自由化を進めて民間参入を促し、再生エネルギーの比率を現在の4%から2025年には20%に高めることを目指すとされている。将来的には公営企業の台湾電力の発電事業と送売電事業を分社化する計画である。

◆立法院の審議では、離島に保管されている放射性廃棄物の撤去問題などが焦点となったが、2025年までの脱原発については大きな異論は出なかった。ただ、産業界を中心に電力供給の不安定化や電気代の高騰を懸念する声も出ている。

韓 国

◆韓国では商用原発25基(2016年)が運転されていて、原発依存度は26.8%(2015年11月発表)。とくに韓国最古の古里原発は8基を有する「原発銀座」であり(政府はさらに2機の追加建設を承認)、原発密集度は世界第1位(月城、蔚珍ハンウル、霊光ハンビツ原発も10位以内)、周辺人口は福島の22倍といわれる(30 km 圏内に380万人が居住)。19基が集中する東南部一帯には60以上の活断層が分布している。今後も原発の拡大が計画されている。原子力技術を輸出する取り組みもあり、2030年までに80基の原子炉を輸出する目標を掲げている。

◆使用済み核燃料の蓄積が深刻な問題であり、とくに、古里原発3号機の貯蔵プールには1,2機の使用済み核燃料も移送されているため、韓国で最も多い818トン(2015年末)が貯蔵されている。これに関して、この燃料プールの水位が低下し、火災となり、水素爆発も起きた場合、西風の季節(冬季)であったら、韓国で最大2430万人が避難を余儀なくされるだけでなく、日本でも最大2830万人が避難を迫られるというシミュレーション結果がある、

◆脱原発の動きもある。本年2月7日、韓国ソウル行政裁判所は、設計寿命(30年)を終えた月城原発1号機の運転延長許可を取り消すよう命じる判決を出した。同1号機は、2012年11月に30年間を経過していたが、事業主の韓国水力原子力発電は10年間の運転延長を申請し、首相直属の原子力委員会が2015年2月に許可していた。これに対して、2000人以上の周辺住民が処分の取り消しを求めて提訴していた。判決では、①必要な書類がそろっていない、②安全性に関する最新の技術水準を適用していない、③原子力安全委員のうち2人が決定前3年以内に原発関連事業に関与していた、などと指摘し、原子力安全法と原子力安全委員会設置法に違反するとした。国民の安全を優先した「歴史的判決」である。

▲月城(ウォルソン)原発、蔚珍(ウルチン)原発(ハヌル原発と改名)、古里(コリ)原発、霊光(ヨングァン)原発(ハンビツ原発と改名)。

オーストリア

◆オーストリアは、原発を持っていない国。1978年の国民投票の結果、原発建設を禁じる原子力禁止法が僅差で可決された。ツベンテンドルフにある同国初の原発は当時完成したばかりだったが、一度も稼動されることなく閉鎖された。また、同年、原発建設の前には国民投票を実施することが法制化された。さらに1999年には 非核条項が憲法に組み込まれた。現在、オーストリア政府は、EUに反原子力エネルギーの方針を進言する意向である。

アメリカ

◆米国には99基の原発があり(2015年1月)、原発依存度は18%程度である。米国では、2013年春、約15年ぶりにキウォーニー原発(ウイスコンシン州)が廃炉になって以来、4発電所5基が運転を終了した。2019年にもさらに1基が停止する。このように、米国では、原発の停止→廃炉が相次いでいる。主な理由は、①原発に比べてコストが安いシェールガス発電が進んだ、②福島原発事故以降、安全対策の強化が課せられ、原発での発電コストが高くなった、などである。

日本でも反原発・脱原発が民意です。
それでも安倍政権は原発と核燃料サイクルの推進に躍起です。
許してはなりません。

原発は人類の手に負える装置ではありません。一方、福島事故以降の経験によって、原発は無くても不都合がないことが分かった今、原発を運転する必要性は見出だせません。そのため、日本でも、脱原発、反原発は社会通念=民意 となっています。本年2月の朝日新聞、3月の毎日新聞の世論調査でも、原発再稼働反対がそれぞれ57%、55%で、賛成のほぼ2倍でした。

重大事故が起こってからでは遅すぎます。原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

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◆前橋地裁判決 原発被害者訴訟原告団全国連絡会の声明

原発被害者訴訟・群馬判決についての声明

2017年3月17日

原発被害者訴訟原告団全国連絡会

【共同代表】早川篤雄 中島孝 鴨下祐也 村田弘 森松明希子 金本友孝

本日、前橋地方裁判所において、福島第一原子力発電所の事故による被害者の損害賠償請求訴訟について、判決が言い渡された。

この判決は、全国の裁判所で提起されている同種の集団訴訟のうち、最初の判決となるものであり、私達は強い関心をもって注視してきた。以下、本判決について私達が思うところを指摘し、今後の各地の裁判に期待するところを述べたい。

1 国の法的責任

国の国賠責任を認めたことは、極めて正当であり、高く評価したい。原発事故について国の法的責任が司法によって断罪されたことは、被害回復に必要な賠償が早期に実現することが、国の責任であることを意味する。

さらに、被害者の健康管理、健康被害へ医療保障や生活保障、住宅保障、社会的な誤解や偏見による差別、いじめ等の防止などの政策的対応が、国の責任として要求されていることを示している。これらの真摯な取り組みを強く求める。

特に、今月末を持って区域外避難者への無償の住宅提供を打ち切るという政策は、この事故による被害(避難行動)に、国に法的責任があると断罪された以上、到底許されるものではない。

2 東電の過失責任について

判決は、原賠法3条との関係で、民法709条の責任を否定した。しかし、実質的には東電の過失(責任)を認めており、これを損害評価の要素として重視したことは高く評価される。津波の予見可能性がありながら、その対応をせず、漫然と最悪の事態を招いたことは、無責任の極みである。このような悪質な事故を惹起した東電の責任は重大であって、被害回復のために十分な賠償が命じられるべきである。

3 損害の評価

慰謝料額(損害)の評価、認定については、押し並べて極めて低い水準のものと言わざるを得ず、裁判所の判断はまことに不十分である。

避難区域内の原告ですら、既払金を除いて、最高額が350万円、最低額は75万円の賠償であり、しかも棄却された原告が72名中53名という結果は、あまりにも冷酷なものと思う。浪江町の集団ADRにおける、一律月額5万円の上乗せ(従って6年間で360万円)というセンター提案が、東電が拒否したために成立に至らなかった事案を想起するとき、その内容はADRの水準にも及ばないことを意味していないか。

原賠審の中間指針の基準は、行政による早期・最低限の救済策に過ぎないことは、判決も認めているところであり、それにもかかわらず、本来あるべき損害の評価をせず、あるべき賠償水準を認めなかった判決は、司法の役割の放棄であるといわねばならない。

4 ふるさと喪失による精神的損害

判決は長文であり、配布された要旨には、損害に関する記載が省略されているため、ここでは論評できない。しかし、上記のとおり、認容水準が著しく低いことからすると、「ふるさとの喪失」に対する評価は十分なもとは考えにくい。

本件事故による放射能公害は、わが国の公害事件において前例のない事態であり、「ふるさとの喪失」という被害を生じさせた。すなわち、当該地域で生活してきた住民の、地域における人間的な交流をはじめ、様々な生活と生業を根こそぎ奪い、積み重ねてきた人生を破壊した。原発事故は、そのような取り返しの付かないものであることを、判決は十分に理解していないのではないかと懸念する。

5 区域外避難について

判決は、区域外避難者について避難区域内からの避難者と区別し、一層低い賠償しか認めなかった。このことは、判決が区域外避難について、その相当性や合理性を十分に認めていないのではないかと懸念させる。

しかし区域外の原告らは、五感によって関知できない放射線による健康への影響に不安を感じ、安全を確保するために、生活を犠牲にして避難した。想定される事態が重大で、取り返しがとかないものである場合、そのリスクが科学的に否定できない限り、予防原則に従って行動することは合理的な判断であって、法的に許容される必要がある。原告らの判断と行動は、一般人・通常人にとって合理的なものと認められ、この損害には相当因果関係が認められる。

避難元である元の居住地が避難区域内であろうと区域害であろうと、避難によって生じる精神的損害には違いがないはずである。元の自宅を離れて、避難先での著しい生活阻害、困難な生活を強いられる点で変わりはない。また、ふるさとでの生活を奪われたことによる「故郷喪失慰謝料」も、元の居住地・自宅に戻れない以上、同じ被害を被っているからである。

それにもかかわらず、これらを区別して、著しく低い損害評価をして、区域内からの避難者との間に差を設けたことは不合理というほかない。まさに被害者を分断するものであって容認できない。

以 上

◆前橋地裁判決 弁護団声明

福島第一原発事故 損害賠償請求事件 前橋地裁判決
弁護団声明

本件訴訟の判決について,弁護団としての見解を述べる。

1 国の賠償責任について

本日の前橋地裁判決は,国の規制権限不行使が違法であったとして,国に賠償責任を認めた。国の規制が適切に機能していなかったことは,平成24年9月に公表された国会事故調報告書においても「規制の虜」という表現によって厳しく指摘されていたところであるが,本判決は,司法の観点からも国の規制が不適切であったことを再確認するとともに,それが法的に違法と評価される程度の重大なものであったことを明確にしたもので,極めて大きな意味がある。

本判決は,原発に対する規制については,国が違法を犯すことがあり得ることを明確に示したものであり,国の規制に対しては徹底した情報開示と主権者である国民による不断の監視が不可欠であるという警鐘を鳴らしたものといえる。今後,国は,被害者に対する賠償が自らの責任であることを自覚し,誠実に実行するべきである。

2 慰謝料額について

本判決は,それぞれの原告が福島第一原発事故で被った精神的苦痛を個別具体的に認定し,原子力損害賠償紛争審査会が定めた中間指針等とは別に独自に慰謝料額を算定し,ある程度の範囲の原告について中間指針等に定められた賠償額をこえる慰謝料を認めた。

そもそも,中間指針等に定められた賠償額は,共通した損害についての最低限の基準にすぎず,個別具体的な損害が立証された場合には指針で定められた損害額を超える賠償がなされるべきことは当然である。しかし,認定された被害額は少額にすぎ,このため,既払額を超えず,棄却となった原告もおり,被害者が受けた精神的苦痛が適切に評価された金額と言えるかについては,大いに疑問がある。

3 津波の予見可能性について

本判決は,平成14年7月に地震調査研究推進本部が公表した「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」等を根拠として,津波の予見可能性を認めた。

原発は,ひとたび大事故を起こしたら本件原発事故のように甚大な被害を生じさせる施設であり,極めて高い安全性が求められる。そして,その安全性を維持するためには,自然科学に関する知見を常に探求し,最新の知見を反映させなされなければならない。

本判決は,国と東電が,このような原発の安全性維持のために求められる真摯な姿勢に欠けていたことを指摘し,国会事故調報告書も明示していたように,本件事故が「人災」であることを改めて認定したものといえる。私達は,本判決を受けて,東電と国が,被害を受けた住民に対して速やかに十分な賠償をするよう,あらためて強く求めるものである。

2017年(平成29年)3月17日

原子力損害賠償 群馬弁護団 団長
鈴木克昌