◆原発はなぜ人類の手におえないのか

【2017年10月9日,京都キンカンで配付。】

原発再稼働を阻止し、原発を全廃するためにもう一度考える

◆関電や政府は、大飯原発3、4号機の3、5月再稼働を企み、老朽高浜原発1、2号機、美浜3号機の再稼働も画策しています。一方、原子力規制委員会は、福島原発事故の収束も見通せないにもかかわらず、東電柏崎・刈羽原発の「新規制基準」適合を発表しました(12月27日)。「新規制基準」は、福島原発事故から2年半もたたない2013年7月に施行されたものです。事故炉の内部の詳細は今でも分かっていないにもかかわらず、福島事故に学んで作成したとしているように、科学的根拠の極めて薄いものです。前規制委員長も繰り返し述べたように、安全を保障するものではありません。

◆原発を現代科学技術で制御し難いことは、福島事故の悲惨さと事故処理の困難さが教えるところです。また、事故後の経験は、原発はなくても、何の支障もないことを明らかにしています。それでも、政府や電力会社は、原発再稼働の動きを活発化させようとしています。

◆ここで、原発が人類と共存できない理由を再確認し、再稼働阻止、原発全廃の断固とした運動を構築するための一助にしたいと考えます。

【1】核反応エネルギーは化学反応エネルギーの数百万倍

◆私たち人類を取り巻く環境は、化学結合で成り立っています。化学結合の切断、生成(これを化学反応という)で得られるエネルギー(すなわち化学反応エネルギー)は、エレクトロンボルト(eV)と呼ばれる単位で評価されます。このeVの世界で得られる温度は、精々数1000℃です。生体内での化学結合はさらに弱く、生体内化学反応の多くは0.1 eV 以下のエネルギーのやり取りで進行します。すなわち、100℃までの世界で、100℃を越えて生きる生物は稀です。

◆一方、原発内などで生じる核反応では、ミリオンエレクトロンボルト(MeV:M=100万)のエネルギーが得られます。このMeVの世界では、理論的には、数億度℃以上の温度が得られます。換言すれば、核反応1反応によって100万に近い化学反応が生じる(結合が切断される)ことになり、核反応によって化学反応が爆発的に起こることになります。このことは、核反応を化学反応によって制御することができないことを示します。なお、体内に取り込まれた放射性物質から出る放射線による内部被曝では、1核反応によって1000万に近い体内の化学結合が切断されます(実際には、核反応エネギーの一部しか結合切断に使われないので、もっと少ない)。

◆以上のように、化学反応エネルギーの数百万倍もの大きさの核反応エネルギーを、化学結合でできた材料によって閉じ込めて置くことは極めて困難です。したがって、原子炉は大量な水で冷やし続けなければならず、水がなくなると、あっという間に大惨事になります。原発の重大事故時には、膨大なエネルギーに起因する熱(核反応熱;核分裂で出る熱、崩壊熱;放射線を出して別の物質に変わるときに出る熱)によって核燃料や被覆材などの原子炉材料が溶融し、水素ガスの発生・ 爆発あるいは水蒸気爆発(高温での水の爆発的蒸発)を引き起こし、メルトダウン、メルトスルーにつながります。化学反応エネルギーでは、このような事態にはなりません。

【2】原発は事故を起こし易く、被害は広域・長期に及び、事故収束は困難

・大惨事は瞬時に進行する

◆前述のように、核反応エネルギーは膨大ですから、原発で冷却水が途絶えると、瞬時に(火災などとは比較にならない速度で)材料の熱融解、水素ガスの発生・爆発あるいは水蒸気爆発を引き起こします。

◆そのように瞬時に進行する事故への対応は至難で、進み始めた事故を止めることは極めて困難です。いわゆる「人為ミス」は避けえません。例えば、海水の原子炉への大量注入は何千億円もする原子炉を使用不能にしますが、重大事故に際して、海水を大量注入してメルトダウンを防ぐ判断を、会社の上層部や政府に仰いでいる暇はありません。事態を把握し、議論している間に、原子炉が深刻で取り返しのつかない状況になります。なお、今までの全ての重大事故では、事故を深刻でないとする判断(願望も含めて)を行い(例えば、計器の指示ミスと判断)、事態をより深刻にしています。

・事故炉は容易に再臨界に達する

◆原発重大事故でメルトダウンした核燃料(デブリ:debris:破片、堆積物の意)は、分散していれば、核分裂反応を起こしませんが、冷却水が途絶えると、崩壊熱で燃料が溶融・集合し、核分裂連鎖反応を開始します(再臨界に達する)。したがって、デブリは、取り出しまで長期間冷却し続けなければなりません。

・原発重大事故は、原爆とは比較にならない量の放射性物質を放出する

◆原爆は、瞬時の核分裂によって放射性物質(死の灰)を放出します。一方、原子炉内には、数年にもおよぶ長期の核分裂反応によって生成した放射性物質が蓄積していて、原発重大事故では、それが放出されます。例えば、100 万kWの原子炉を1年間運転したときの生成放射性物質量は約 1 t(トン)で、広島原爆がばらまいた放射性物質量750 gの約1,300倍です。原発事故で放出された放射性物質を完全回収できるほど現在科学は進歩していないことは、福島事故の経験が教えるところです。結局は、海洋や大気へ垂れ流され、地球全体を汚染させます。

・原発の重大事故の被害は広域におよぶ
(火災が10 km 先に飛火することは無い)

◆原発重大事故によって放出された放射性物質は、事故炉近辺を汚染させるだけでなく、風によって運ばれた後、雨によって降下しますから、汚染地域は極めて広範囲に広がります。福島事故でも、約50 km 離れた飯舘村も全村避難になり、約200 km 離れた東京や千葉にも高濃度の放射性物質が降下しました。チェルノブイリ事故では、日本でも放射性物質が検出されました。海に流出した放射性物質は海流に乗って広範囲の海域を汚染します。福島の放射性物質はアメリカ西海岸にも到達します。避難計画や原発稼働への同意などでは、30 km圏(UPZ)内が対象とされますが、被害は30 kmをはるかに超えて広域におよびます。

◆若狭の原発の重大事故では、関西はもとより、中部、関東も高濃度の放射性物質で汚染される可能性があります。京都駅、大津駅は高浜原発、大飯原発から60数km、大阪駅は80数kmの位置にあります。250万人が住む京都府、150万人が住む滋賀県などのほぼ全域が100 km 圏内にあり、この全域が避難対象になっても、避難は不可能であることは自明です。琵琶湖の汚染は、1,450万人の飲用水を奪います。原発からの汚染水は日本海にたれ流されますが、日本海は太平洋に比べて比較にならないほど狭い閉鎖海域ですから、高濃度に汚染されます。美しい海岸線を持ち、漁獲豊かな若狭湾の汚染はさらに深刻です。

・放射性物質による被害は長期におよぶ

◆火事は長くても数十日で消火できますが、放射性物質は、半減期に従って消滅する[放射線を出して他の物質(核種)に変わる]まで、放射線とそれによる熱を発生し続けます。代表的な放射性物質の半減期は、プルトニウム239で2万4千年、ネプツニウム237で214万年、セシウム137で30.7年、ストロンチウム90で28.8年、ヨウ素131で 8.02 日です。

◆放射性物質は、1半減期で1/2に、半減期の10倍で約1/1000、13.3倍で約1/10000、20倍で約1/100万に減少します。例えば、プルトニウム239を1/10000に減少させるには約32万年かかります。それでも、安全なレベルになるとは限りません。

◆なお、半減期の短い物質は早く崩壊しますから、物質の量が同じであれば、時間当たりにすれば、多くの放射線を出します。

・原発事故の収束には、途方もない時間を要する

◆放射性物質は長期にわたって放射線を出し続けますから、高放射線のために事故炉の廃炉は困難を極めます。また、放射線による熱発生のため、冷却水が途絶えると、核燃料が再溶融し、再び核分裂を始める可能性もあり、長期間冷却水を供給し続けなければなりません。福島原発では、事故から7年近く経っても、溶け落ちた燃料の位置も一部しか分かっていません。完全廃炉には、50年以上を要するとの見解もあります。

◆放射性物質による被害は長期におよびますから、原発事故では長期の避難を強いられ、住民は故郷を奪われ、家族のきずなを断たれ、発癌の不安にさいなまれます。通常の災害では、5年も経てば、復興の目途はある程度立ちますが、原発事故は、生活再建の希望も奪い去ります。福島事故では、4年経った2015年から、絶望のために自ら命を絶たれる避難者が急増していると報道されています。

【3】原発は、長期保管を要する使用済核燃料、放射性廃棄物を残す

◆原発を運転すると、核燃料の中に運転に不都合な各種の核分裂生成物が生成します(中性子を吸収する中性子毒核種など)。したがって、核燃料を永久に使用することは出来ず、一定期間燃焼させると、核分裂性のウランやプルトニウムは十分残っていても、新燃料と交換せざるを得なくなり、そのため、使用済み核燃料がたまります。現在、日本には使用済み核燃料が17,000トン以上たまり、原発の燃料プールや再処理工場の保管場所を合計した貯蔵容量の73%が埋まっています。原発が順次再稼働した場合、数年後には満杯になります。なお、混合酸化物(MOX)燃料が使用済み燃料となったとき、放射線と発熱量の減衰速度は、ウラン燃料の4倍程度遅く、そのため、4倍以上長く水冷保管しなければなりません。

◆国の計画では、全国の使用済み核燃料は、使用済み核燃料プールで冷却した後、六ケ所村の再処理工場に輸送して、再処理して、ウラン、プルトニウムを取り出し、再利用することになっていました。しかし、再処理工場の建設はトラブル続きで、すでに2兆2千億円をつぎ込んだにもかかわらず、完成の目途(めど)は立っていません。1,300 kmもの配管を持ち、危険極まりないこの工場の運転は不可能と言われています。もし、再処理できたとしても、膨大な放射性物質を含み、長期保管を要する高レベル放射性廃液が多量に生まれます。これを、ガラス物質と混合して、ガラス固化体として、地下に保管する研究も進められていますが、何千年以上も安定で、放射性物質が溶出しないガラス固化体はありません。

◆使用済み核燃料を、使用済み核燃料プールで、一定期間(5年程度)冷却した後、再処理せずに、そのまま空冷保管する方が、再処理するよりは安全と考えられますが、それでも、何万年以上の安全保管は至難です。

◆福井県にある原発13基が持つ使用済み核燃料貯蔵施設の容量は5,290トンで、その7割近くがすでに埋まっています。高浜、大飯、美浜の原発が再稼働されれば、7年程度で貯蔵限度を超え、原発の稼働は出来なくなります。

◆なお、使用済み核燃料貯蔵プールは脆弱(ぜいじゃく)で、冷却水を喪失し、メルトダウンする危険性が高いことは、福島第1原発4号機の燃料プールから冷却水が漏れ、核燃料溶融の危機にあった事実からでも明らかです。

◆一方、日本には、低レベルおよび高レベル放射性廃棄物が200リットルドラム缶にしてそれぞれ約120万本および約1万本蓄積されていますが、その処分は極めて困難で、永久貯蔵はおろか中間貯蔵を引き受ける所もありません。

◆数万年を超える保管を要する使用済み核燃料、放射性廃棄物の蓄積の面からも、原発は全廃しなければなりません。放射性物質を消滅させるに有効な方法はありません。

【4】原子燃料は無尽蔵で、燃料枯渇が原発廃止の理由にならないから厄介

◆地球表面の土壌中のウランの平均濃度は1 ppm (ppm;100万分の1) と言われています。土壌 1 t に 1 gのウランが存在します。富鉱では、0.3~0.7% すなわち岩石1 t に 3~7 kgのウランが存在します。したがって、原子燃料は多量に存在すると言えます。ただし、ウラン[238U(約99.3%)、 235U(約0.7%)]を核燃料として使用するには、膨大な費用を要する235Uの濃縮が必要です。

◆一方、原子炉を運転すれば、核燃料であるプルトニウム生成します。このプルトニウムの化学的性質は、他の元素とかなり異なりますので、プルトニウムを取り出すことは、ウラン濃縮よりは簡単で、安上がりです。

◆もちろん、高放射線下でのプルトニウム取り出し作業(再処理)が困難なことは、前述のとおりですが、もし、再処理が可能が可能になれば、原理的には、核燃料を無尽蔵に取出せることになります。したがって、政府、財界、電力は、ウラン燃料炉よりさらに運転が難しく厄介であるにもかかわらず、プルサーマル炉を求めているのです。また、そのために、プルトニウムを作り、取り出す高速増殖炉と再処理工場が必要と考えているのです。[化学、化学工学は、高速増殖炉、再処理工場を操業できるほど発達していない!]

◆エネルギーは麻薬のようなものですから、それを欲する限り、麻薬の製造装置である原発から脱却できないだけでなく、上限なしに原発を増設することになりますから、厄介です。この意味で、原発製造企業=麻薬生産者、電力会社=麻薬の売人、原発賛成の人=麻薬患者といえます。

福島原発事故以降の経験は、
原発はなくても電気は足りることを実証しました。
人類の手におえない原発を動かす必要はありません。


2月25日(日)~26日(月)
大飯原発うごかすな!若狭湾岸一斉チラシ配布
(拡大アメーバデモ)

関電原子力事業本部へのデモと申し入れ、原子力規制事務所への申し入れ

ご参加、ご支援、カンパをお願いします。

・主催:大飯原発うごかすな!実行委員会
・呼びかけ:オール福井反原発連絡会、若狭の原発を考える会、ふるさと守る高浜・おおいの会
・連絡先:木原(090-1965-7102:若狭の原発を考える会)、宮下(090-2741—7128:原子力発電に反対する福井県民会議)


2018年1月12日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

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◆2018年を原発のない社会創り元年に!

【2018年1月5日,京都キンカンで配付。】

◆新年おめでとうございます。今年が、原発と決別し、過剰なエネルギー消費、物質浪費社会を根底から問い直す年になることを願っています。

◆昨年12月には、嬉しいことが2つありました。

◆第一は、13日の広島高裁での伊方原発運転差止め決定です。この決定は、3.11福島原発事故の大惨事の尊い犠牲の上に、形成された脱原発、反原発の圧倒的民意を反映したものであり、脱原発、反原発の粘り強い闘いの成果です。

◆第二は、関電が、2019年3月と12月に40年越えとなる老朽大飯原発1、2号機の廃炉を発表せざるを得なかったことです(12月21日)。2千億円を超えると言われる安全対策費がこの決断をうながしたことは明らかです。これは、福島事故の大きな犠牲とその後の大衆運動、裁判闘争の高揚によって、安全対策をないがしろにできなくなったためであり、大衆運動、裁判闘争の成果ともいえます。(ただし、喜んでばかりはいられません。関電や政府は、これと引き換えに、原発新設を狙う可能性もあります。注視が必要です。)

◆今年は、脱原発、反原発運動をさらに高揚させ、原発のない社会を展望しましょう!

大飯原発3、4号機再稼働阻止を突破口に、
原発全廃を勝ち取ろう!

 関電や政府は、大飯原発3、4号機の3、5月再稼働を企み、「原発銀座・若狭」の復活を狙っています。若狭の原発には、他の原発に比べて次のような特殊事情があり、福島原発事故以上の被害をもたらす重大事故の可能性が高いと考えられます。
(以下は、昨年5月配布のチラシを改定したものですが、再稼働阻止闘争のさらなる高揚のために再録します。)

若狭の原発が持つ特殊な問題

【1】若狭には原発13 基、「もんじゅ」、「ふげん」が集中

・重大事故の場合、1基に留まらない

◆高浜原発、大飯原発は同じ敷地内に各々4基、美浜原発、敦賀原発、廃炉決定の「もんじゅ」、廃炉中の「ふげん」は近接していて、合計7基の原子炉があります。このように原子炉が近接しているとき、1基が重大事故を起こせば、隣の原発にも近寄れなくなり、多数の原子炉の重大事故に発展しかねないことは、3基がメルトダウンし、3基が水素爆発した福島原発事故が教えるところです。

◆なお、高浜原発が地震や津波に襲われれば、14 km 弱の至近距離にあり、高浜原発と同様に若狭湾に面している大飯原発も同じ被害を被ることは容易に想定できます。

・原発依存度が高く、広域の自治体が原発を推進;脱原発、反原発の声を上げ難い

◆例えば、川内原発では、原発推進の立場をとるのは原発立地の薩摩川内市のみであり、隣接するいちき串木野市、阿久根市、出水市、日置市、さつま町などは、再稼働への地元同意の対象外とされたことへの不満と再稼働への異議は多数です。いちき串木野市での緊急署名では、再稼働反対が市民の過半数を越えました。

◆しかし、若狭ではこの地域の1市、3町が原発立地で、原発推進の立場に立っています。これらの自治体の原発依存度は、薩摩川内市に比べても圧倒的に高く、そのため、脱原発、反原発の声を上げ難いと考えられます。ただし、次のように、若狭でも、顕在化はしていないけれども、脱原発、反原発を望む声は極めて多く、とくに、老朽原発運転反対は大多数です。


コラム「若狭の原発を考える会」の経験から

◆「若狭の原発を考える会」は、アメーバデモと称する行動を、毎月2回(1回2日間)行っています。関西や福井から原発立地の若狭あるいは原発周辺の東舞鶴(京都府)、高島市(滋賀県)に集まり、3~5人が一組になり、徒歩で、鳴り物を鳴らしながら、また、「反原発」の旗を掲げ、肩にかけたスピーカーで呼びかけながら、全ての集落の隅から隅まで、チラシを配り歩く行動です。普通は、2グループ程度ですが、多いときには、全国からの応援を得て、10グループ以上になることもあります。

◆「若狭の原発を考える会」は、アメーバデモを3年以上継続し、お会いした住民1000人以上から、直接お話をうかがってきましたが、その中でも、「原発はいやだ」の声が圧倒的に多数であり、原発推進の声はほとんど聞かれていません。原発立地でも、表には表れていないけれども、脱原発、反原発が多数の願いであり、民意なのです。


【2】100 km 圏内に1千万人以上が住む;避難は全く不可能:1,450 万人の水源がある

◆高浜原発や大飯原発から50 km圏内には、京都市、福知山市、高島市の多くの部分が含まれ、100 km圏内には、京都府(人口約250万人)、滋賀県(人口約140万人)のほぼ全域、大阪駅、神戸駅を含む大阪府、兵庫県のかなりの部分が含まれます。このことと、福島原発から約50 km離れた飯舘村が全村避難であったことを考え合わせれば、若狭の原発で重大事故が起こったとき、500万人以上が避難対象となる可能性があり、避難は不可能です。

◆しかし、政府や自治体が行う避難訓練では、そのことが全く考えられていません。この圏内には琵琶湖があり、1,450万人の飲用水の汚染も深刻な問題です。

◆さらに、避難訓練には、原発事故での避難は極めて長期に及ぶ(あるいは永遠に帰還できない)という視点がありません。福島およびチェルノブイリの事故では、今でも避難された10数万人の大半が故郷を失ったままです。

◆1昨年8月27日に高浜原発から30 km圏の住民179,400人を対象にして行われた避難訓練は、最大規模と言われながら、参加者数は屋内退避を含めて7,100人余りで、車両などでの避難に参加したのはわずか約1,250人でした。それも県外への避難は約240人に留まりました。この規模は、重大事故時の避難の規模とはかけ離れた小ささです。

◆車道などが使用不能になったことを想定して、自衛隊の大型ヘリによる輸送訓練も予定されていましたが、強風のために中止されました。また、悪天候のために、船による訓練は全て中止されました。老人ホームなどへの事故に関する電話連絡は行われましたが、実際行動の必要はないとされました。

【3】高浜、大飯、美浜原発は加圧水型(PWR):沸騰水型(BWR)より安全とは言えない

◆原子力規制委員会や政府は、加圧水型原子炉(PWR)は、沸騰水型原子炉(BWR)より安全であるとして、PWRである川内、高浜、大飯、伊方、泊などの原発の再稼働を先行させようとしていますが、これは、「事故を起こした福島原発とは型が異なるから安全」とする国民だましです。以下に述べますように、過酷事故はBWRよりPWRの方が起こりやすく、起こると急激です。

スリーマイル島(TMI)原発事故が教えるPWRの危険性

◆福島原発事故の32年前(1979年)に炉心溶融事故を起こしたTMI原発はPWRでした。

◆高浜原発(PWR)の炉内圧力は約150気圧で、福島原発(BWR)の約70気圧の倍であり、配管が破断したとき、噴出する冷却水の量と勢いは格段に大です。出力密度がBWRの約2倍で、それだけPWRの方が炉心溶融しやすく、事故発生から炉心溶融まで、PWRでは1時間程度(TMIの例)、BWRでは5~12時間(福島事故の例)と推定されます。

◆PWRの方が、中性子照射量が多いため、材料の照射劣化がより早く進行します。加圧熱衝撃を受けると、高圧と相まって、原子炉容器の破裂事故(最悪の事故)を招きかねません。この危険性は、中性子などの放射線照射量に応じて大きくなるため、原発老朽化は大問題です。なお、高浜1号機は43年、2号機は42年、3号機は33年、4号機は32年、大飯1号機(廃炉決定)は39年、2号機(廃炉決定)は38年、3号機は36年、美浜3号機は42年を経過した、何れも老朽原発です。

◆過酷事故時の挙動が福島原発より複雑です。例えば、PWRでは、運転中に生成したプルトニウムの偏りが起こり易く、炉内での核分裂挙動が複雑となり、進行している事態の評価や判断を誤らせる一因となります。

◆PWRでは、格納容器内でも水素爆発が起きます。BWRでは格納容器内に窒素を充填しているため、格納容器内では水素爆発は起こりません(福島事故での水素爆発は全て格納容器外)。

【4】ウラン―プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料プルサーマル炉・ 高浜3、4号機

◆既存原発のプルサーマル化では、元々ウラン燃料を前提とした軽水炉のウラン燃料の一部をMOX燃料で置き換えて運転するので、技術的な課題が山積です(全MOX炉も制御困難)。なお、原子力規制委員会審査における重大事故対策の有効性評価の解析対象は、ウラン炉心のみであり、MOX炉心については何ら評価されていません。過酷事故を起こしたときには、猛毒のプルトニウムや超プルトニウム元素が飛散して、深刻な内部被ばくを起こす危険性も大です。

重大事故の確率が大きい

◆燃料被覆管破損の危険性が大です。例えば、MOX燃料中に酸素と結合し難い白金族元素が生成しやすく、余剰酸素が被覆管を腐食します。また、核分裂生成物ガスとヘリウムの放出が多く、燃料棒内の圧力が高くなり、被覆管を破損させかねません。

◆核燃料の不均質化(プルトニウムスポット)が起こりやすく、燃料溶融の原因になります。

◆ウラン燃料と比べて燃焼中に核燃料の高次化(ウランより重い元素の生成)が進みやすく、特に中性子吸収確率の大きいアメリシウム等が生成しやすくなります。核燃料の高次化が進むと、原子炉の運転や停止を行う制御棒やホウ酸の効きが低下します。さらに進むと、核分裂反応が阻害され、臨界に達しなくなり、核燃料として使用できなくなります。

◆中性子束(密度)が大きく、高出力ですから、MOX燃料装荷によって 運転の過渡時(出力の増減時)に炉の制御性が低下します。(1/3程度しかMOX燃料を装荷できない。)

◆一部の燃料棒のみをMOX燃料にすると、発熱量にムラが生じます。温度の不均衡が進行すると、高温部の燃料棒が破損しやすくなります。

使用済みMOX燃料の発熱量は、ウラン燃料に比べて、下がり難い:長期の水冷保管が必要

◆発熱量が下がり難いため、長期にわたってプール内で水冷保管しなければ(使用済みウラン燃料の4倍以上)、空冷保管が可能な状態にはなりません。使用済み燃料保管プールが、脆弱で、冷却水を喪失しやすいことは、福島原発4号機のプールが倒壊寸前であった事実からも明らかです。

◆取り出し後50年~300年の使用済みMOX燃料の発熱量は、使用済みウラン燃料の発熱量の3~5倍です。

◆使用済みMOX燃料の発熱量を、50年後の使用済みウラン燃料の発熱量レベルに下げるには300年以上を要します。

MOX燃料にするためには、使用済み燃料再処理が必須

◆再処理を行うと、使用済み燃料をそのまま保管する場合に比べて、事故、廃棄物など全ての点で危険度と経費が膨大に増えます。(再処理費までMOX燃料の製造コストの一部と看做すと、MOX燃料の使用は経済的にも引き合わない。)

【5】関電や政府は、40年越え老朽原発・高浜1,2号機、美浜3号機の再稼働も企む

◆原発は事故の確率が高い装置ですが、老朽化すると、重大事故の確率が急増します。次のような理由によります。

◆高温、高圧、高放射線に長年さらされた圧力容器、配管等の脆化(ぜいか:もろくなること)、腐食は深刻です。中でも、交換することが出来ない圧力容器の脆化(下記注を参照)は深刻です。電気配線の老朽化も問題です。

◆建設時には適当とされたが、現在の基準では不適当と考えられる部分は多数ありますが、全てが見直され、改善されているとは言えません。例えば、地震の大きさを過小評価していた時代に作られた構造物、配管の中で交換不可能なもの(圧力容器など)です。最近は、安全系と一般系のケーブルの分離敷設の不徹底なども指摘されています。

◆建設当時の記録(図面など)が散逸している可能性があり、メンテナンスに支障となります。

◆建設当時を知っている技術者は殆どいないので、非常時、事故時の対応に困難を生じます。

◆とくに、ウラン燃料対応の老朽原発でMOX燃料を使用することは、炉の構造上、大きな問題です。


(注)老朽原発圧力容器の脆性破壊
原子炉本体である圧力容器は鋼鉄で出来ていて、運転中は、約320℃、約150気圧の環境で中性子などの放射線に曝(さら)されています。この鋼鉄は、高温では、ある程度の軟らかさを持っていますが、温度が下がると、ガラスのように硬く、脆(もろ)くなります。圧力容器は原子炉運転期間が長くなると、硬化温度(脆性=ぜいせい=遷移温度)が上昇します。例えば、初期には‐16℃で硬くなった鋼鉄も、1年、18年、34年と炉内に置くとそれぞれ35℃、56℃、98℃で、40年を超えると100℃以上で硬化するようになり、脆くなります。原子炉が、緊急事態に陥ったとき、冷却水で急冷すると、圧力容器が脆化していれば、破裂する危険があります。初期(未照射)の鋼鉄は、水冷では破壊されません。とくに、不純物である銅やリンの含有量が多い鋼鉄で出来た老朽圧力容器の脆化(ぜいか)は著しいと言われています。


福島原発事故以降の経験は、
原発はなくても電気は足りることを実証しました。
重大事故を起こしかねない原発を動かす必要はありません。
原発の稼働は、電力会社の金儲けのためです。

原子力防災とは、避難計画ではありません。
不可能な避難を考えるより、
事故の原因=原発を廃止することが原子力防災です。
原発全廃こそ原子力防災です。

重大事故が起こってからでは遅すぎます。
原発全廃の行動に今すぐ起ちましょう!

2018年1月5日

若狭の原発を考える会(連絡先・木原壯林 090-1965-7102)

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